藤枝だるま
今日は、『藤枝だるま』の取材に行くぞ!
あれ?コン太くんがやる気になってるって珍しいね。
だろ?
実は先日、藤枝市の産業祭に行ってきただよ。
そこで『藤枝だるま』に一目ぼれして、「今度、作っている所を見せてください!」ってお願いしたわけさ。

そして、オレっちの熱意が通じて、見学させてもらえることになったってわけ。
あまりのしつこさに職人さんがコン負けしたってことだね?
ちがう!
この辺りは、蓮華寺池や藤枝市郷土博物館の少し南側、いわゆる旧東海道沿いの道だね
ほれ、着いたぞ。
うわ~、いろいろなだるまが飾られてるね~
今から訪ねる長橋秀明さんは伝統工芸の職人さんだから気難しいぞ。
失礼がないようにな。
緊張してきたね。
こんにちは!見学させていただきに来ました!
いらっしゃい。手土産持ってきてくれた?
うっ
手ぶらで来ちゃいました・・・。
ははは、冗談だよ。
ん?気さくなお父さんだ。
母さんや、お客さんにお茶を出してあげて~。お代は後でいただくから~。
いや、ノドも渇いてないなので、お茶は結構です・・・ははは・・・。
さすがのコン太くんも、手も足も出ないって感じだね。
おぅ、相手がダルマ屋さんなだけに、な。って、うるさい!
さっそくですが、そもそもダルマって、どういうものなんですか?置物ですか?
さすが、らびこクン、いいこと聞くね。
いやいや、オレっちも今から聞こうと思ってたです・・・。
そもそもだるまっていうのは、起き上がり玩具(がんぐ)の一種、つまり、底を重くして、倒れても自然に起き上がるようにしたおもちゃだよ。
へぇ・・・おもちゃなんですね。
長橋さんメモ 【だるまとは】 だるまの原型は、室町時代に流行した玩具(おもちゃ)の“起き上り小法師(おきあがりこぼし)”と言われているよ。 “だるま”の名は、インドで生まれて西暦500年頃に中国で活躍した達磨大師(だるまたいし)という実在の僧の名が由来だよ。 禅宗を開いたお坊さんで、嵩山少林寺(すうざんしょうりんじ…ご存じ少林拳発祥のお寺)で壁に向かって九年間座禅を組み続けて、ついに悟りを開いた(面壁九年(めんぺきくねん))という言い伝えがあるんだ。 その時の姿、つまり赤い袈裟(けさ…赤い袈裟は位の高い僧だけが身につけることができる)を頭からかぶって座禅(ざぜん)を組んでいる姿、そして表情を、江戸時代に“起き上がり小法師”につけて、それが現在の“だるま”となったと言われているんだ。 |
「藤枝だるま」さんは、いつからだるまを作ってるですか?
だるまを何年から作り始めたかは正確にはわからないんだけど、土人形と張子(はりこ・・・紙を型にはって作る)の玩具を作り始めたのは、江戸時代の天保(てんぽう)元年(1830年)だよ。
ボクで5代目。
テンポー?
江戸幕府の三大改革の一つの“天保の改革”の頃からってことですね。

そういえば、看板に書いてありました。約180年の歴史があるんですなぁ。
藤枝市周辺ってのは、昔から玩具作りが盛んだっただか?
志太(しだ)地区(藤枝市、焼津市、島田市周辺)では、江戸時代から明治にかけて「土天神・志太天神」と呼ばれる土の人形が作られていて、多くの人形師が生まれ、これらの熟練の職人の技によりひな人形づくりが盛んになったんだ。
「藤枝だるま」もこうした土人形をつくる人形師の技をもとにして始められ、発展してきた張子人形・玩具のひとつなんだ。
「藤枝だるま」って言うと、藤枝市周辺で作っているだるまの総称のように思われるかも知れないけど、実際は藤枝市内でだるまはウチしか作ってないよ。
「藤枝だるま」はウチのだるまの名前であり、お店の名前でもあるんんだ。
では、日本各地にいろいろなだるまがあると思うんですが、「藤枝だるま」の特徴って、どんなことがあげられるんですか?
表に飾ってある写真や、だるまは見たかな?

カラフルなだるまがいろいろあったけど、それが特徴?
ちょっと違うんだな~。
長橋さんメモ 【藤枝だるまの特徴】 藤枝だるまには、上の写真右上のように、下ぶくれの形をしているのもあるし、中には耳がついたのもあるよ。 ただ、一番有名なのは、ヒゲが8の字になっているだるまかな。 そして、この8の字のヒゲを持つだるまは別名「八雲(やくも)ダルマ」と呼ばれているよ。 焼津に避暑に来ていた小説家・随筆家のラフカディオ・ハーン(小泉八雲-こいずみやくも 1850~1904)が下宿先の魚商人・山口乙吉(おときち)さんの家に置いてあった藤枝だるまを気に入って、「乙吉のだるま」という短編小説を書いたんだ。
八雲さんは、ダルマのヒゲの”8”と、八雲の“八”が一致すると、気に入ってくれたようだね。 |
小泉八雲っていうと、焼津市との関わりが思い浮かぶけど、藤枝市にもゆかりがあるんですね。
さて、話ばかりしてても、タイケンダーのネタにならないだろ?
実際にだるまを作ってみなよ、と言ってあげたいところだけど、形を作るのは難しいので見学しててね。
&
はい。
まずは木型を用意してっと。
この木型も自分で彫るんだけど、特別なサイズじゃない限りは今あるものを使うよ。
今うちで扱っているだるまだけでも30種類ほどあって、木型は全部で700点くらいは揃っているかな。
木型だけでも700点くらい保存してるってこと?
すごい!
それくらい数を持っていないと、制作が間に合わなくなってしまうからね。
自分が作った木型だけじゃなくて、何代も受け継がれてきた木型もあるよ。
もしかしたら、普通の人でもだるまを一から作れるかも知れない。
でも、何十年何百年と伝えられた木型や技を使うところに、伝統やこだわりがあると思うんだ。
そうですね。
では作ってみるよ。
長橋さんメモ 【藤枝だるまの作り方1】 ●張り込み●
形を整えるよ。
ほら、だるまっぽくなってきたでしょ?
|
このだるまの形は、本当にちょっと下ぶくれですね![]()
今作っているこの型のだるまは、たまたまこういう形だけど、藤枝だるま全部が、下ぶくれってわけではないよ(笑)
でも、だるまが紙でできてるって、知らなかったなぁ。
長橋さんメモ 【藤枝だるまの作り方2】 ●型抜き●
●目張り● |
和紙かぁ・・・あんまり見たことないなぁ。
コン太君の隣りに置いてあるのが和紙だよ。

最近では和紙がなかなか手に入りにくくてね・・・

昔の書類や古文書の紙を、古本屋さんから買うこともあるんだよ。
長橋さんメモ 【藤枝だるまの作り方3】 ●台付け●
これを付けなきゃ、七転び八起きにならないんだ。
●胡粉塗り(ごふんぬり)● 胡粉というのは、貝の粉だよ。 これによって、だるまの質感が決まってくるよ。
●彩色●
だるまがは師走(しわす)前から3ヶ月間くらいが一番需要が多いんだ。それまでに仕上げなきゃいけないので、逆算すると、この作業は秋頃までにしなければならないんだけど、真夏は日焼けなどで良い色が出にくいんだ。いろいろ大変なんだよ。 ●顔描き●
●金ざし● |
だるまができあがりましたね!
オレっちも作りたかったなぁ。すごいだるまを作ったのに・・・。
それじゃ、最後の金ざしをやってみよう。好きなだるまを選んで、好きな字を書いてみ。
へ?いやいやいや、ウソです。オレっちは字が下手なので遠慮しときます![]()
コン太くんは職人じゃないんだから、下手で当たり前。
大切なのは、心をこめて書くことだよ。
ただし・・・ボクより上手に書くなよ![]()
職人さんより上手く書くなんて、めっそうもございません?
さ、どのだるまに書く?
それでは、こちらのオレンジ色のだるまに。
文字は、優勝を願って・・・何の優勝かは、「コン太の日記(仮)」を読んで察してください・・・さらさらさら、と・・・。
必勝!
うーん、確かに文字は・・・。うそうそ(笑)
はい、それじゃ仕上げるよ。

やっぱり職人さんですねぇ・・・。手つきが違います。
コン太くんみたいに、「自分で作ってみたい!顔を描いてみたい!」って人が多いと思うんですが、体験はできないんですか?
多い時は年間800人以上の子どもたちが見学に来て、顔を描く指導もしてたんだど、最近はボクもいろいろ忙しくて昔ほど教えられないんだ。
でも、繁忙期を除けば、絶対ダメってわけじゃないから、体験を希望する場合は、一度電話で相談してくれるといいかな。
でも、形を作るのは難しいから、体験できるのは顔を描くところだけだよ。
あと「明日お願いします!」って言われると、準備もできなくて困ってしまうから、時間に余裕をもって連絡してほしいな。
では、最後にうかがいます。
だるまを作る上で大切なことって、どんなことかしん?
だるまっていうのは、おもちゃでありながら、ただのおもちゃではないんだよね。
他のおもちゃとの一番大きな違いは、だるまには、それを手に取る人の願いが込められるんだ。
さっき、だるまの赤は達磨大師の袈裟の色って言ったけど、そもそも赤色は厄除け・魔除けの色であり、疱瘡(ほうそう)を引き起こす疱瘡神が嫌う色でもあるんだ。
だから、親は子どもに赤い色のものを持たせたいと思って、赤いだるまを持たせて、健康を願ったんだよ。
今では、うちでは赤いだるま以外も作っているけど、どんな色であっても、いろいろな願いを叶えようと、この「藤枝だるま」を買ってくれていると思うんだ。
だから、一つひとつ、決して手を抜かず、買ってくれる人のことを考えながら作るようにしているよ。
なるほど。では、オレっちも悲願を達成するまで、このダルマを大切にします。
今日はありがとうございました。

どういたしまして。また遊びに来てよ。
(おしまい)
住所:藤枝市本町1-1-24 |
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